学会長挨拶
第49回青森県理学療法士学会 学会長挨拶
学会テーマ
「アダプテーションと理学療法」~身体機能とパフォーマンスの最適化を考える~
第49回青森県理学療法士学会 学会長 藤田俊文(弘前大学)
ヒトは、日常生活や運動、労働などの様々な場面において、常に変化する環境に適応しながら活動しています。この環境に適応する能力「アダプテーション」は、身体機能やパフォーマンスを最適化するために非常に重要な役割を果たしています。
アダプテーションとは、運動、神経、身体機能などの側面において、環境の変化に対して適応的に調節される一連のプロセスを指しています。具体的には、運動適応により新しい運動パターンを獲得したり、神経適応によって神経伝達効率が変化したり、身体機能適応によって筋力や持久力などの身体能力が向上したりします。このようなアダプテーションは、環境の変化に対する適応メカニズムとして働き、運動パフォーマンスの向上や維持に貢献します。日々の臨床において、アダプテーションは重要な視点であり、最良の理学療法を実施するために必須となる思考過程といえます。
理学療法は、このアダプテーションを促進する重要な手段であり、特に、適切な運動負荷 (運動強度、頻度、継続性など)や難易度設定を考慮した運動療法、物理療法、ADL練習など、さまざまな手段を駆使して対象者の身体機能やパフォーマンスの改善が期待できます。一方で、アダプテーションは、疾患や障害、加齢による機能低下などの個人要因の影響、また物理的、社会的、心理的、文化的な様々な環境要因の影響を受けます。特に生活環境、労働環境、スポーツ環境など、対象者が置かれた環境によってアダプテーションの内容や程度が異なってきます。そのためにも理学療法においては、個人要因に加えて環境要因を十分に考慮して最適なアプローチを検討する必要があります。
本学会では、アダプテーションの神経生理学的メカニズム、運動学的解析手法、環境要因の影響、理学療法アプローチの実践例などについて、多角的な視点から議論を行いたいと考えております。そこで、学会企画として講演やセミナーでは、アダプテーションから身体機能やパフォーマンスの最適化を考えるために最新の臨床・研究知見を共有し、身体機能向上、障害予防、健康増進、スポーツパフォーマンス向上、生活の質向上、社会復帰支援など、様々な分野における理学療法の可能性を探求したいと思っております。
学会テーマである「アダプテーションと理学療法」のもと、多くの会員の皆さまに参加いただき、日々の臨床や研究活動などについて討論や情報交換に加えて、個人間さらには組織間での親睦を深めることができる学会にしたいと思っております。多くの皆さまのご参加を心よりお待ちしております。